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執筆者の写真tarotamada808

地震に強い家を作り



1995年の阪神淡路大震災では、構造計算していない木造住宅が軒並み倒壊しましたが、先日の熊本地震でも同じような惨状が見られました。地震で倒壊しない木造住宅を建てるにはどうすればいいのでしょうか?

東海地震がもうすぐそこまで迫っています。

家づくりにおいて、デザイン、省エネ性能とともに「構造」はとても大事な要素です。ところが、“構造は難しい”という先入観からか、住まい手も作り手も知識が浅く、構造の安全性に対する意識が薄いのが現状です。


建物の構造の安全性を確認するために知っておきたいこと


まず、構造の安全性のレベルを把握しておきましょう。建物の構造が安全かどうかを確認する方法としては、

① 構造計算(許容応力度計算など)  ② 性能表示計算(耐震等級・耐風等級など)  ③ 仕様規定(壁量計算・四分割法・N値計算など)の3つがあります。

①は木造住宅3階建て以上、延床面積500㎡超の建物で、確認申請の際に構造計算書を提出する義務があるので、非常に安全性が高いと言えます。それぞれの部材がそこにかかる応力に耐えられるかどうかを許容応力度と比較するというものです。②は長期優良住宅や性能評価住宅に該当し、中レベルの安全性能です。住宅の性能を一定の基準で表すための計算方法です。③は建築基準法で定められた、最低限やらなければならない安全性の検討方法で全11項目があります。



次に、構造の安全性を確認する項目としては、

①軸組計算(壁量計算・四分割法・N値計算)  ②部材検討(柱・梁などの設計、たるき・母屋・棟木の設計、土台の設計)  ③地盤・基礎検討(地盤調査、地盤補強設計、基礎の設計)の3つがあります。

このように項目ごとに整理して考えると、構造の安全性は理解しやすくなります。

肝心なことは、設計者にすべて任せきりにしないこと。専門分野である壁量には気を配っても、部材や地盤まではそれほど重視していない設計者も存在するからです。 建築部材の8〜9割を占めるプレカット材(現場で使いやすいように工場で加工された材木)は、専門業者に費用を払って依頼しない限り、構造計算はしてくれないのが一般的。だから、寸法が間違っていたり柱や梁が細くても、誰も気づかずにそのまま住宅に使用され、結果としてたわむことも十分あり得るのです。 地盤も同じことが言えます。「地盤保証付き」というのは、地盤が沈下した時は修復しますよという意味です。設計者が地盤調査会社とコミュニケーションをとり、地盤の状況を理解しているかどうか必ず確認してください。


木造2階は要注意 「四号建築物」の盲点


「四号建築物」とは、①木造2階建て以下 ②延床面積500㎡以下 ③最高軒高9m以下 ④最高高さ13m以下の建物を意味します。(上図)木造軸組工法や2×4(枠組壁工法)など、工法に関係なく、街で見かけるほとんどの木造2階建て住宅がこれに該当します。「四号建築物」を設計する場合、11項目の仕様規定を必ず検討する必要があります。 その11項目とは、

① 壁量の確保(壁量計算)  ② 壁配置のバランス(四分割法) ③ 柱の柱頭・柱脚の接合方法(N値計算法)

という3つの簡易計算に加え、

④ 基礎の仕様  ⑤ 屋根ふき材等の緊結  ⑥ 土台と基礎の緊結  ⑦ 柱の小径等  ⑧ 横架材の欠込み  ⑨ 筋かいの仕様  ⑩ 火打材等の設置  ⑪ 部材の品質と耐久性の確認

という8つの仕様ルールです。

ただし、これらの仕様規定は建築確認申請の構造計算書の提出が義務づけられていません(四号特例)。つまり、耐震性などの構造耐力に関わる仕様規定を満たしているかどうかの検討書や図面も提出を求められず、本当に建築基準法に合っているかどうかさえチェックされないのが現状です。 構造計算書の提出が義務化されていなくても、安全性の検討は必ずしなければなりません。それにもかかわらず、中には検討も不要と勘違いしたり、壁量計算はもちろん、四分割法やN値計算もできない、「経験」と「勘」だけで家づくりを行う設計者もいらっしゃるように見受けられます。さらに、構造計算をしていると言いつつ、パソコンソフトに頼って数値合わせしているだけで、内容を理解しているとは言えない設計者もいます。住宅業界ではよくある話ですが、一般消費者にはほとんど知られていないのではないでしょうか。

その結果として、設計者と施主さんとの間でこんな会話が繰り返されてきました。 施主さん:「地震に強い家をつくってほしいんですけど、できますか?」 設計者:「安心してください。ウチは耐震等級3相当の頑丈な家を作っていますから」 施主さん:「耐震等級3相当? よくわからないけど、じゃあ安心だわ。会社も地域密着で知名度があるし、人柄も信用できるからお願いします」。 この設計者は施主さんを騙すつもりなど全くないでしょう。本当に一生懸命に家を建ててくれるはずです。

でも、その一生懸命の裏付けとなるのは設計者の「経験」と「勘」に過ぎません。構造計算していない建物は、どんなに一生懸命に建てても、築年数が浅くても、大地震が発生すればいつ倒壊しても不思議ではないのです。地震で倒壊しない木造住宅を建てるために、構造計算によって数値化されたデータでの裏付けが必要です


耐震等級3をベースに、構造計算してくれる工務店を選ぶ

1981年(昭和56年)に壁倍率や壁量計算係数の見直しなど、木造住宅の耐震設計法が大幅に改正されました。現在の日本の木造住宅の約7割が昭和56年以降に建てられたもので、劣化に問題がなければ法律上は一応安全と考えられています。 そして2000年(平成12年)に建築基準法が改正され、従来の壁量計算に四分割法、N値計算が加わり、現行基準に至っています。耐震性能は高くなり、これでもう倒壊する心配はないと思われていました。 ところが、阪神淡路大震災から21年経って発生した熊本地震でも、木造住宅の倒壊状況は全く変わっていません。四号特例が認められている限り、残念ながら今後も地震で木造住宅の倒壊が減ることはないでしょう。

では、地震で倒れない木造住宅を建てるためにはどうすればいいのでしょうか? 構造計算の知識がない作り手が、施主さんに正確な情報を伝えることは不可能です。「耐震性も万全」「長期優良住宅を超える安心性能」という宣伝文句を鵜呑みにせず、施主さん自身が構造安全性の正しい知識を身につけ、判断しましょう。「難しいから」「面倒だから」と設計者に任せきりにしてはいけない時が来たのです。「基準法の1.5倍の耐震等級3で、構造計算もきちんとしてください。義務化されていないからやらないと言うのなら他社で建てます」と、これ位の強い気持ちで家づくりに臨みましょう。 このコラムをきっかけに構造について興味を持ち、理解を深めながらそれぞれの家づくりのパートナーと地震に強い家を建ててください。

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